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名ばかりのチーム医療実践にならないために看護師は何を磨くべきか?

米国で生まれた「チーム医療」

医療界では、そう遠くない昔より「チーム医療」という言葉が使われ、部分的に実践されています。それは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、おのおのの高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と一般的に理解されています。

 

チーム医療というのは、米国で起用された医療サービスのスタイルです。米国では日本よりも先駆けて医療の細分化が進み、1人の専門家だけでは医療サービスを受ける人々に満足度の高い医療内容を提供しづらくなってしまったので、その状況をカイゼンするために誕生しました。

 

つまり、より専門性の高い職種が専門分化せざるを得ない状況だけれども、専門性の高い単種類の専門職だけでは医療サービスに対して変化し続けるニードへ対応することができません。そのため、多くの職種が協働・連携した医療サービスの実践が求められてきました。

日本でも包括的な医療サービスの提供を

包括的な医療サービスの提供を日本でも、医療の高度・複雑化、専門分化、超高齢社会、人々が有する価値観の多様化、患者・家族の医療への参画、患者意志決定と人権の尊重などが医療環境に影響を与えるようになり、米国で実践されている「A Team Approach to Health Care」が注目されはじめました。少しずつですが、患者の健康を維持・回復するために必要な多職種の専門家と重要他者(家族、またはそれに相当する人的資源)が協働・連携しながら医療サービスを提供する実践スタイルが望ましいのでは、といわれるようになったのです。

 

チーム医療がもたらす具体的な効果は、①疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医療・生活の質の向上、②医療の効率性の向上による医療従事者の負担の軽減、③医療の標準化・組織化を通じた医療安全(本来は、医療安全というよりは、まずは患者安全ですね)の向上などが期待されています。

 

チーム医療をさまざまな医療現場で実践するには、各医療スタッフの知識・技術の高度化への取り組みや、ガイドライン・プロトコルなどを活用した治療の標準化の浸透などが必要とされています。それによってより質の高い医療を実現するためには、おのおのの医療スタッフの専門性を高め、その専門性にゆだねつつも、チーム医療という活動スタイルを通して再統合するという発想の転換も求められます。

 

つまり、チーム医療を推進するためには、①各医療スタッフの専門性の向上、②各医療スタッフの役割の拡大、③医療スタッフ間の連携・補完の推進が重要な要素となります。

分業ではなく協働と連携を

分業ではなく協働と連携をチーム医療は、①専門性志向(各職種の専門性が重要)、②患者志向(患者中心が重要)、 職種構成志向(メンバーとして複数職種の存在が重要)、④協働志向(複数の専門職の相互協力が重要)の4つの要素によって構成されています。これら4つがコンフリクト(摩擦や衝突)を起こさないようバランスを調整することも重要です。

 

一方では、チーム医療を進めた結果、一部の医療スタッフに負担が集中したり、安全性が損なわれたりすることのないような管理運営もとても大切ですね。

 

チーム医療とは、決して役割分担(分業)ではなく、多職種の領域が協働・連携しあう、しかもオーバーラップ(重層的)しながら医療サービスを提供することです。

チーム医療のために看護師に必要なこと

さて、そこでチーム医療の基本的なあり方をふまえ、チーム医療の推進に資する看護師になるためには、何が必要なのでしょうか。

 

基盤になる要素は、チーム医療にかかわる看護師の立ち位置を明確化すること、看護業務は保助看法などの幾多の法律によって規定されているということです。そのうえで、看護師は看護業務について法的位置と施設の規定を十分に理解して、法律と組織の規定に遵守した実践を行うことが鉄則です。

 

その実践者として重要な点は、看護師は医師の指示のもとであっても安全確保できる自らの実施能力と責任能力を鑑み、できることの可否を自らが判断し、業務を実施できる能力があると認められる者であることを認識していることです。要するに、看護師は専門職としての自律性を担保できる人であることが前提ということです。

 

その前提のうえで、看護師の役割を明確化、かつ拡大するための取り組みが必要です。それには、①他医療スタッフと意味ある連携を図ることができるなど、安全性の確保に十分留意しつつ、②1人ひとりの看護師の能力・経験の差や行為の難易度などに応じ、看護師が自律的に判断できる機会を拡大するとともに、③看護師が実施しうる行為の範囲を拡大し、能力を最大限に発揮できるような環境を用意する必要があります。

医師と看護師の従属的関係

これまで、診療報酬の改定によって、チーム医療のミニモデルともいえる多職種構成による多くの医療チームが誕生し、多職種がともに仕事をする場面が日常的にみられるようになりました。しかし、それは必ずしも十分な成果を挙げているとは言いがたく、また、目指すチーム医療にはまだまだ遠い感は否めないというのは、おいらだけでしょうか。

 

その背景要因の1つして医師と看護師の従属的関係が指摘されています。わが国は、医師が専門職の階層性の頂点に位置づけられています。そのため、医師優位の風潮はどこの臨床現場にも多少なりとも存在し、それがチーム医療の実践に少なからず影響を及ぼしていることは事実でしょう。

 

医師自身も自らがチーム医療において常にリーダー的役割を担っていると認識を持っている場合が多いことも示されています。それは、わが国がこれまでの社会形成の中で自ら醸成してきたヒエラルキーの文化なので、いまさらすぐには変えられるはずがありません。

やるべきことは専門職としての確固たる知識と技術を身につけること

要するに、そんなことをクリアすべき課題だと悩んでもしかたありませんよね。そんなことよりも、とっととやるべきことは、自らがチーム医療の専門職メンバーとして誰とでも対等・同等・平等な協働関係を構築し、自律した看護専門職としての深い知識と見識を身につけるための研鑽です。

 

ひいては、リーダーとしての役割を担える資質を高めることも必要です。しっかりとした倫理観と専門的知識を持って、チーム医療にかかわる仲間どうしが尊重しあいながら、患者に有益な相互牽制(よい意味でのモニタリングと評価)をできるようになることが最も重要なことです。これができていない、あるいはできるようになるための取り組みをしない看護師が大勢を占めている以上は、対等関係が築かれることは絶対ありません。

 

質が高く、安心・安全な医療を求める国民の声が高まる一方で、医療の高度化・複雑化に伴う業務の増大により医療現場の疲弊も深刻化しています。働き方改革を含め、医療のあり方が根本的に問われはじめている今、「名ばかりではない、まともなチーム医療の実践」がわが国の今後の医療サービスの行方とあり方を握るキーワードであることは疑いの余地はありません。

記:YM